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MEWS たろうクリニックからのお知らせ

2019.06.24(月)
抗認知症薬の効果と限界について

抗認知症薬について説明します。

内容のまとめ

長文となるので先に結論を書くと、

・抗認知症薬の効果が認められているのはアルツハイマー型知認知症とレビー小体型認知症に限られており、きちんと頭部画像検査や採血などで他の認知症を除外してから診断し処方する必要がある。

・抗認知症薬の効果は認知機能障害の改善であり、処方前には認知機能の評価を行い、その後も効果を判定するために定期的に認知機能評価を行う必要がある。

・抗認知症薬が「認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」と添付文書にも記されている。また、「効果が認められない場合は漫然と投与しないこと」とも書かれており、漫然と投与しないことが重要である。

・嘔吐、下痢、めまい、不整脈、せん妄など抗認知症薬による副作用は少なくない。副作用を認めた場合には中止を検討する。

以上4点です。

 

日本は特に抗認知症薬が頻繁に処方されている

詳しく説明をしていきます。

前提として、日本は抗認知症薬の処方が諸外国と比べてとても多いことで知られています。

東京都医学総合研究所の奥村先生たちの報告によると、85歳以上の高齢者の17%が抗認知症薬の処方を受けているとのことです。(ちなみにドイツでは85歳以上の「認知症高齢者」のうち18%が抗認知症薬の処方を受けています。日本では認知症かどうかは関係なく全85歳以上の高齢者のうち17%の人が処方されています)

訪問診療をしていると抗認知症薬の副作用でお困りの方を診察し、中止することで感謝されるという事をしばしば経験します。そこで抗認知症薬の効果と副作用について広く知ってもらう必要があるのではないか思い、この記事を書くことにしました。

 

「認知症の進行を遅くします」に二つの注意点

抗認知症薬の処方を受けている方のほとんどは、「認知症の進行を遅くします」と説明を受けて内服されています。

しかし、すべての認知症に効果があるわけではなく、認知症そのものの進行を遅くする効果があるわけでもありません。

 

処方の前の診断が重要

日本で保険適応があり使用可能な抗認知症薬は4剤ありますが、ガランタミン、リバスチグミン、メマンチンの3剤はアルツハイマー型認知症にのみの適応となっています。ドネペジルだけはアルツハイマー型認知症に加えてレビー小体型認知症にも適応があります。

認知症の状態となる原因疾患は70以上あることがわかっており、アルツハイマー型認知症はその中で最も多い原因疾患で約60%を占めます。逆に言うと40%は別の原因であり、その原因検索のために頭部画像検査や採血を行うことが必要になります。たとえば、甲状腺機能低下によっても認知症の状態となり、採血で甲状腺の機能を評価し、低下があれば内服で補うことで症状が軽快します。しかし、東京都医学総合研究所の報告によると抗認知症薬の処方を受けている方のうち甲状腺機能の評価をされていた方は33%に過ぎず、十分な認知症診断が行われないまま抗認知症薬が処方されている現状が明らかとなっています。

 

抗認知症薬の効果は「認知症そのものの進行抑制」ではなく「認知機能の改善」

次に抗認知症薬の効果について。4剤の添付文書には「認知症症状の進行抑制」と書いてありますが、一方で前述のように「認知症の病態そのものの進行を抑制するという成績は得られていない」とも書いてあります。どういうことでしょうか。

 

抗認知症薬の効果を示す図として、上記のようなものを見たことがある方がいらっしゃるかもしれません。

これは治験結果をもとに作成された図ですが、いくつか追加での説明が必要です。

まず縦軸について、これは認知機能の改善効果をあらわしています。とても大きい差のようにみえますが、実際には70点満点のテストで3点ほどの改善効果で、このグラフの視覚効果ほどの差はありません。

また横軸に関しても、認知症の経過何年もの変化を表しているように感じますが、実際には半年の評価です。

ということで、現実的な効果を表す図とするとこのようになります。

また、抗認知症薬が効く仕組みを簡素化して説明すると、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンの三剤は脳の中のアセチルコリンの量を増やし、メマンチンはグルタミン酸の作用を抑えることです。これらは記憶に関わる物質で、記憶障害を改善させる効果があると考えられています。

つまり、薬の効果を下記のようにみれば認知症の症状の進行を遅くしているようにみえますが、

実際には下記のように認知機能障害の改善効果と考えるほうが自然です。

 

認知機能障害を少しだけ改善しても日常生活が改善しなければあまり意味がありません。

そのため、抗認知症薬を保険適応とするかどうか判断する治験においては全般機能評価と認知機能障害の両方が改善することを求められていますが、治験でこの両方の改善効果を認めたのはドネペジルのみで、他の三剤は認知機能障害の改善効果は認めたものの全般機能の改善効果は認めませんでした。

このように、薬の効果は基本的に認知機能障害の改善効果ですので、抗認知症約の処方の前にはきちんと認知機能の検査を行い、その後も定期的に評価を行う必要があります

また、効果がないにも関わらず(実証されていない認知症そのものの進行抑制効果に期待して)漫然と投与してはいけないことは4剤の添付文書にも書かれているとおりです

 

副作用も少なくない

また、抗認知症薬に伴う副作用も少なくありません。様々な消化器症状や、不安焦燥の悪化、不整脈、めまい、転倒などの副作用が起きていることを経験します。

人によっては抗認知症薬の副作用で焦燥感が増しているのを、別の抗認知症薬を重ねて鎮静をかけようとされている方もいらっしゃいます。

抗認知症薬の効果と副作用を検討した論文で、一人の患者さんに効果を示すためには10人に投与する必要がある(Number needed to treat=10)で、12人に投与すると1人に副作用が出現する(Number needed to harm=12)と報告されています。当然のことですが抗認知症薬の投与中はその副作用に注意を払い、副作用が出現した場合は中止を検討する必要があります

以前も抗認知症薬の副作用についてヨミドクターのコラムで取り上げましたので、そちらもご参照ください。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180827-OYTET50033/?catname=column_uchida-naoki

 

さいごに

訪問診療では中等度から重度の認知症の方と接することが多く、すでに抗認知症薬の処方を受けている方を診察することが多いため、中止して感謝されてばかりで新たに抗認知症薬を処方することは多くありません。

一方で、もの忘れ外来では認知症の診断を行いアルツハイマー型認知症、もしくはレビー小体型認知症と診断し抗認知症薬を処方することもあります。その経験では、NNTは10より良く4人に1人くらいは効いている手応えがあります。

しかし、薬物療法よりも効果があるのはデイサービスです。デイサービスに行き人と話し、運動して、バランスの良い食事を食べることは認知症の人が全般的機能を維持することに繋がっていると感じています。

他にも、実際の診察ではご本人やご家族が困っていることについてお聞きしどう解決するかを話し合ったり、ご本人やご家族がやりたいことについてお聞きし、どうやって達成するかについて話し合ったりしています。

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